バーチャルオンリーと事業説明会でより多くの株主様と対話。タイムラグ約1秒の超低遅延ライブ配信を導入し、双方向のコミュニケーションを実現
株式会社SHIFT 様

写真左:藤井 郁子さま(人事本部 総務部 コーポレートサービスグループ)
写真右:井上 未那登さま(人事本部 総務部 コーポレートサービスグループ)

- 企業名
- 株式会社SHIFT
- 企業概要
- SHIFTはIT業界の常識にとらわれないアプローチでソフトウェアテストを体系化し 開発現場からIT業界全体に至るまで品質保証のスタンダードを確立しています。ソフトウェアの品質保証におけるパイオニアとして業界を牽引しながら「新しい価値の概念を追求し、誠実に世の中に価値を提供する」という理念のもと、SHIFTグループとして、IT業界のみならず、日本の社会課題の解決に貢献します。
- 業種
- 情報・通信業
- 株主数
- 11,296名(2024年8月31日時点)
- 決算期
- 8月
- 上場市場
- 東京証券取引所 プライム市場
- 証券コード
- 3697
2024年のバーチャルオンリーでは、平均の3倍を超える出席率に。株式会社SHIFTは2020年からハイブリッド参加型で株主総会を実施し、2022年にバーチャルオンリーへ切り替え。2023年からはICJのVSMプラットフォームを利用し、超低遅延ライブ配信でバーチャルオンリーを開催しています。今回は、株主総会運営の変化や超低遅延ライブ配信の効果、株主総会での対話の工夫について、コーポレートサービスグループの植野彩乃さま、井上未那登さま、藤井郁子さまにお話を伺いました(以下敬称略)。
コロナ禍で会場の収容人数が従来の3分の1に。株主との対話と公平な出席機会確保のため、バーチャルオンリーを開催
2020年からハイブリッド参加型、2022年からバーチャルオンリーで株主総会を開催されていますが、その経緯を教えてください。
植野:リアル会場で株主総会を開催していた頃は、だいたい50〜70名の株主様に出席いただいていました。当時は株式分割前で株主様が少なかったものの、出席割合としては比較的高い水準でした。しかし、2020年以降は、感染拡大防止対策として会場の収容人数を大幅に制限せざるを得なくなり、リアル会場に出席いただける株主様が先着20名に限られました。これは従来の約3分の1にあたる人数で、多くの株主様が出席したくてもできない状況になってしまいました。
そのため、2020年からはリアル会場とあわせて、オンラインでライブ配信を行うハイブリッド参加型を開催することにしました。しかし、ハイブリッド参加型は、会社法上の「出席」として取り扱われないため、オンライン参加株主様は質問や議決権行使ができず、あくまでもライブ配信を視聴するのみとなってしまいます。当社代表の「より多くの株主と対話をする」という意向を受け、すべての株主様が公平に出席でき、双方向のコミュニケーションが可能な場を目指して、2021年総会で「場所の定めのない株主総会」を開催可能とする定款変更を行い、2022年総会からバーチャルオンリーに切り替えました。

バーチャル株主総会の開催に向けて、準備で大変だったことはありますか?
植野:バーチャルオンリー開催にあたっては、経済産業省や法務省への大臣確認申請が特に大変でした。当時は、バーチャルオンリーを実施している企業が少なく、インターネット等でも大臣確認申請の前例を見つけることができませんでした。省庁側も担当者が2~3名という体制で、お互いに手探りの中、逐一電話で確認を取りながら進めていきました。後になって、ICJがバーチャルオンリー開催に向けた「大臣確認申請サポート※」を行っていることを知り、「もっと早く知っていれば…」と思いましたね。
※オプション「大臣確認申請サポート」のお申し込みが必要となります
また、ハイブリッド参加型からバーチャルオンリーへ切り替えた際には、「映像だけで伝える難しさ」を強く感じました。ハイブリッド参加型では、あくまでもリアル会場がメインであるため、リアル会場の雰囲気で補える部分もありましたが、バーチャルオンリーでは、すべてが画面越しのため、視線の動き、カメラの画角、ライティングといった映像の要素が非常に重要になります。例えば、リアル会場では登壇者が手元の資料やパソコンを見ながら発言する場面もありましたが、配信では下を向いた際に顔の暗さが気になってしまいます。そのため、登壇者の視線や表情が自然に見えるように、カメラ横の原稿表示用モニターの位置や高さ、フォントサイズなども細かく調整しました。話している人物の表情や視線は、画面越しにご覧になる株主様の印象に大きく影響しますし、それがそのまま会社のイメージにもつながるため、リハーサルでは時間をかけて調整をしました。
総会中の役員と事務局のコミュニケーションが容易に
リアル会場がないバーチャルオンリーに切り替えて、良かったことを教えてください。
植野:まず、会場案内の業務がなくなった点が挙げられます。これまでは、リアル会場までの誘導係の人員配置を検討したり、警察へ届け出を出したりと、さまざまな準備が必要でした。また、11月の寒い時期に長時間屋外に立って株主様をご案内する負担も大きかったですが、そうした業務もなくなりました。その分、会場内外で誘導などを行っていた社員6名ほどが、純粋に株主総会運営に専念できるようになりました。資料準備や質問対応といった事務局の人手が増え、運営全体がよりスムーズになったと感じています。
藤井:リアル会場では、常に株主様への目配り・気配りが求められますが、バーチャルオンリーでは株主様の視線がないため、全員が事務局の業務に集中できるようになったことも、スムーズな株主総会運営を実現できた理由の一つだと思います。
植野:また、カメラに映らない場面であれば、事務局の社員が役員のすぐ近くに行って直接コミュニケーションを取ることができます。リアル会場では、株主の皆様の後方からジェスチャーで伝えようとしていましたが、どうしても株主様の視線や役員までの距離が気になってしまいます。一方、バーチャルオンリーであれば、カメラに映らないタイミングや場所を見計らって、議長と直接やり取りすることも可能です。逆に、役員側で気になることがあった場合も、その場で事務局に伝えることができ、すぐにサポートができます。そのため、役員にとってもプレッシャーが緩和され、やりやすくなったと感じているのではないかと思います。
ちょっとした会話では解決しないような事態が起きた場合には、「しばらくお待ちください」とお伝えして一時的に配信画面を切ることもでき、その間に社内で相談して対応策を決められます。実際に、バーチャルオンリーの初年度では株主総会の目的事項以外の質問が出された際に、一時的にライブ配信を止めて対応を検討したこともありました。
こうしたように、株主の皆様に見えないところで柔軟にコミュニケーションが取れる点は、不測の事態への対応という意味でも非常に有効だと感じています。
株主総会に出席される人数はリアル会場の頃と比べて変化はありましたか?
植野:もともと当社は株主数に対しての出席率が高かったため、バーチャルオンリーに切り替えた後も、大きく変わったという印象はありません。前回の2024年は株主数約7,900名のうち72名が視聴され出席率は約0.92%、前々回の2023年は株主数約2,800名のうち35名が視聴され出席率は約1.23%でした。一般的にバーチャルオンリーでは、株主数に対する視聴率はおよそ0.3%程度と言われていますので、当社の視聴率は比較的高い方だと認識しています。
当社では2025年1月に株式分割を行い、個人投資家の数が増加しました。バーチャルオンリーは会場のキャパシティを考える必要がないので、今後はさらに多くの株主様にご出席いただけることを期待しています。

タイムラグ約1秒の超低遅延ライブ配信で、双方向のコミュニケーションを実現
バーチャルオンリー総会当日、大変だったことはありますか?
植野:バーチャルオンリー初年度は、実際の撮影配信会場での議事進行とライブ配信映像との間に生じる20〜30秒のタイムラグを考慮した進行がとても難しかったです。例えば、「質問を2分間受け付けます」とご案内して、手元の時計で時間ぴったりに締め切ってしまうと、ライブ配信を視聴している株主様はタイムラグの分、実際には2分間よりも短い質問時間になってしまいます。そのため、あらかじめタイムラグを考慮して、30秒ほど余裕を持たせて進行していましたが、株主様の視聴環境によってはさらにタイムラグが生じている可能性もあり、「本当にこの時間で十分なのか」と、正解がわからないまま進めていたので常に不安でした。
また、タイムラグによって、質問の受け付けなどの株主様の反応を待つ間、配信上では待ち時間ができてしまうことも気になっていました。一方で、株主様も当社からの反応を待つ時間があったかと思いますので、タイムラグは双方向のコミュニケーションを目指すうえでの課題でした。
バーチャルオンリーに切り替えて2年目の2023年からICJのVSMプラットフォームを導入されていますが、その背景を教えてください。
植野:バーチャルオンリー開催初年度に課題となった配信のタイムラグを解消できないかと考えていたところ、ICJが超低遅延ライブ配信に関するセミナーを開催されていたので、話を伺いました。実際に超低遅延ライブ配信を体験したところ、体感でわずか1秒程度のズレしかなく、「これであればタイムラグを気にせずに運営できる」と感じ、導入を決めました。
超低遅延ライブ配信の導入後、運営面でどのような変化がありましたか?
井上:タイムラグを気にせず、ほぼリアルタイムで株主総会を進行できるようになったことが、最も大きな変化です。運営側としては、配信中の画面操作や切り替えの確認を即座に行えるようになったため、非常に安心感があります。従来はタイムラグがあったため、管理者側で画面を切り替えても、株主様の視聴画面に反映されるまでに時間がかかっていました。時間がかかることが分かってはいても、本当に切り替わったかどうか確認できるまでの待ち時間は、失敗が許されない緊張感の中では非常にストレスが大きかったです。そうした不安が解消された点は、運営にとって大きなメリットだと感じています。

「マニュアルがなくても操作ができる」。株主様だけではなく、事務局にもやさしいシステム仕様を評価
VSMプラットフォームを2年連続でご利用いただいていますが、その理由をお聞かせください。
植野:VSMプラットフォームは、株主様の視聴画面の操作性、視認性が圧倒的に良いです。当社もIT企業としてユーザビリティを追求しており、パッと見るだけで分かる、マニュアルを読まなくても操作ができるといった直感的な使いやすさは非常に重要だと考えています。
ICJにはVSMプラットフォーム用のヘルプデスクも設置してもらっていますが、2024年の株主様からの問い合わせは1件だけでした※。当社の場合はIT企業であるため、投資いただいている株主様のITリテラシーが比較的高い可能性もございますが、VSMプラットフォームの操作に迷われることはほとんどないと思います。
※オプション「ヘルプデスク」のお申し込みが必要となります
井上:運営側にとっても、画面上のどこに何があるのかが非常に分かりやすく、ユーザビリティの高さを実感しています。さらに毎年改善を重ねられ、項目ごとの仕切りが分かりやすくなるなど、よりグラフィカルになりました。そういった直感的にわかりやすい点はVSMプラットフォームの操作担当として、とてもありがたいです。
植野:システムを頻繁に変えることにはデメリットもありますが、より良い株主総会を目指して、当社では毎年使用するシステムの見直しを行っています。それでも、VSMプラットフォームは毎年着実に改善がなされていて、我々の株主総会を支えていただいている実感を大変感じています。

ICJのサポートで印象的だったことはありますか?
植野:VSMプラットフォームに限らず、こちらからの質問に対して毎回即座にご回答いただけたことが、とても印象に残っています。株主総会は会社にとって非常に重要なイベントですが、通常業務と並行して限られた時間の中で準備を進めなければなりません。その中で、分からないことを調べるのに時間を取られてしまうと、事務局のメンバーにとって大きな負担になります。そうした状況下で、的確かつ迅速に対応いただけたことは、本当にありがたかったです。特に招集通知を作成する際は、他社のバーチャルオンリーの事例を交えて、当社にとって最適な記載方法をアドバイスしていただき、とても助かりました。
井上:本番では、ICJの担当の方がすぐ隣で待機してくださり、すべての操作をサポートいただけたことで、緊張感のある中でも安心して操作を行うことができました。
総会終了後には「事業説明会」を開催。貴重な「株主様との対話の機会」を今後も充実させていきたい
バーチャルオンリー終了後には、VSMプラットフォームを用いて事業説明会を開催されていますが、その理由を教えてください。
植野:総会終了後の事業説明会の開催は、リアル会場で実施していた頃から続けている取り組みです。他社では、株主総会の中に事業説明を組み込んでいるケースも多いかと思いますが、当社ではあえて株主総会と事業説明会を分けて実施しています。理由としては、株主総会と事業説明会をまとめて行うと、株主総会の目的事項以外の質問が出やすくなる懸念があるからです。まずは法律に基づいた株主総会をしっかりと行い、その後に株主様から広くご質問いただける場として事業説明会を設けています。
また、VSMプラットフォームと配信システムの連携により、議決権行使などを伴うバーチャルオンリーではリアルタイム配信のみ(巻き戻し不可)で全員の視聴にズレが出ないよう設定する一方で、事業説明会では、巻き戻して配信の見直しができる「追っかけ配信」が可能な設定に変えるなど、柔軟な運用も可能になっています。
個人投資家の方々にとって、株主総会とその後の事業説明会は、当社との対話や質疑応答の重要な機会だと思います。そのため、事業説明会は当社への理解を深めていただく貴重な時間だと捉えています。株主総会と事業説明会はあわせて2時間近くのプログラムですが、当社代表も台本ではなく自身の言葉で語りますので、視聴者数が大きく減ることもありません。
ほかにバーチャルオンリーで工夫されていることや、今後取り組みたいことはありますか?
植野:2024年は初めて事前質問の受け付けを行いました。それまではどのような質問が、どのくらい寄せられるか見当がつかなかったため実施を見送っていました。実施してみたところ、複数の株主様から同様のご質問をいただき、事前に回答をまとめて準備することができました。また、当日質問の受付時間中に事前質問をご紹介することで、株主様の入力をお待ちする時間を有効活用できただけでなく、株主様も当日聞いた内容に関する質問に集中いただけたと感じましたので、事前質問は今後も継続する予定です。

最後に、バーチャル株主総会の導入を検討されている企業の方々へメッセージをお願いします。
植野:リアル開催からバーチャルオンリーに切り替えて一番感じたことは、本番中の社内のコミュニケーションが格段に取りやすくなり、運営が非常にスムーズになったことです。大臣確認申請や定款変更など、開催に向けての準備は多くありますが、一度バーチャルオンリーを経験されると、その良さを実感できると思います。遠方の株主様も出席しやすくなるだけでなく、バーチャルオンリーによって効率化した社内リソースを株主様との対話に集中させることができるため、結果として株主還元にもつながっていると思います。そのため、バーチャルオンリーは会社にとってもメリットがありますし、株主様にとっても有意義なものになっていると感じています。
もしバーチャル株主総会を検討されている場合は、ぜひ挑戦してみてください。バーチャルオンリーが合わなければ、リアル開催に戻すこともできますし、ハイブリッド参加型や出席型など、自社に合った開催方法を選択することができます。
井上:私はハイブリッド参加型になってから株主総会に関わるようになり、バーチャルオンリーの経験の方が多くなったぐらいなのですが、バーチャルオンリーに必要な設備や撮影配信という観点では、想像しているほど大変ではないと感じました。
藤井:現在はバーチャル株主総会の開催をサポートするさまざまな環境が整っており、数年前よりも挑戦しやすくなっているのではないかと思います。当社では、多くのバーチャル総会の経験を積まれているICJと配信プラットフォームの方々のサポートを受けて、安心してバーチャルオンリーを開催できています。
本日は貴重な話をお聞かせくださりありがとうございました。
(取材日:2025年7月)
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